ゼノなブログ。

ゼノシリーズのお話。

ゼノシリーズにおける共通のテーマ性・グノーシス主義について③ ゼノギアス考察

どうもお久しぶりです。

世間はコロナウイルスで大変なことになってますが、皆さんお元気でしょうか。
個人的に楽しみにしていたゼノギアスモノリスソフト作品&部分委託作品プチオンリー・モノリストが今月行われる予定だったのですが、秋に延期となってしまいました。
非常に残念ですが、運営企画される方や、参加される皆様方は是非めげずに頑張って欲しいと思ってます。応援しております。


前回はグノーシス主義の特にウァレンティヌス派の神話を細かく見て、神話体系的な具体内容についてを説明しました。
各ゼノシリーズ作品で聞いた語句が山程出てきたのが気づいたと思います。
今日は前半はグノーシス主義に絡めたゼノギアスの考察、後半はグノーシス主義の神話論の先がどうなったかをお話したいと思っています。

…思っていましたが、ゼノギアスについての記事だけでとんでもない時間が過ぎてしまいました。グノーシス主義の神話論の先については、また今度にさせて下さい。申し訳ないです。

 

 
早速ですが、ゼノギアスのお話をしてみます。
前回クロスワードパズル的考察と言ったのは、確実なところを当てはめればそれに連なる文脈から更に他の要素をお互いに引っ張ってくることが出来、最終的に出てきたキーワードを繋げると新たに見えてくるものがあるからです。

 

同じ単語が連続する関係で紛らわしそうな部分は一応色分けしていきます。
グノーシス主義としては赤色 ゼノギアスとしては青色 にします。

まず、ほぼ確実に引用しているであろう部分を当てはめてしまいましょう。
その後でそこからの連想ゲームを始めてみます。


まず最初に言うべき事はやはり、下のソフィア=アカモートとは、ミァン・ハッワーを含めた(歴代の)エレハイムである…ということですね。まぁそもそもソフィアという、EP4ではそのままの名前が出てくるわけですが。前々回に言った通り、ソフィアには智慧の女神という性格だけでなく、聖母とか母としての性格を持っています。現世の人々は全てソフィアの堕落をきっかけで産まれたわけですから。ミァン・ハッワーというデウスのパーツ=ヒトを産み落とす存在である彼女が関係がないわけがないです。
※(ミァン・ハッワーのHawwa=ヘブライ語で生命、転じてイヴの意味)
しかし、エレハイムの考察はこれだけではないです。


フェイ、正確にはアベル以下の歴代接触者とは、どう考えてもソーテールの立場にあります。エレハイムをアカモートとした場合の対という要素からも連想できますが、セフィロートの道を通り波動存在と接触出来る根拠、デウスシステムとは関係なくゼノギアスを操れる根拠そのものがそもそもそれ以外に説明が出来ないからです。この点に関してもエレハイムと同様に更に考察できる要素があります。


デウスとはヤルダバオトデミウルゴス)です。グノーシス神話論的に言うのであれば、より正確には(補体側の方の)ミァンこそがデウスヤルダバオトと見た場合の本質部分であると言ってもいいかもしれません。根拠はいくつかありますよね。まずアルコーンに当たるアイオーンを作っている事。ディアボロも出てきています。デウスの思惑の要素を強く受け持つカインやガゼルの法院は散々作中でデウスの事を神と言っていました。まさしく、自分を神と思っている造物主の要素と言っていい要素です。十二の王となるアルコーンとは、ガゼルの法院と人数もぴったり合致します。

 

プレロマはゼノギアスにおける高次元空間
中間界はセフィロートの道
現界は四次元宇宙
という図式を取っているのもわかると思います。セフィロートの道のセフィロートとは前回話した通り、カバラが使うセフィロトの樹から来ていると思います。流出説に基づき神との合一を目指す道筋なわけですから、意味もそのまま使われているのがわかると思います。


これらから当然プレロマにいるべき存在であるアイオーンとは、波動存在ということになります。彼(?)は、EP1時代にデウスとゾハルの連結実験の際にゾハルに閉じ込められてしまったわけですが、真の神に当たる存在が下の世界に落下してしまった事は、そのままソフィアの堕落と同じ事件・事故なわけです。


また、前回は説明していなかったのですが、他にウロボロスという言葉があります。ウロボロスには様々な意味が込められているのでその辺りはWikipediaで見てもらうとして、簡単に言えばこの世界の象徴を自らの尾を咥えるヘビ(または竜)で表しています。ですからグノーシス主義に限って言えばこの世界=物質世界の現界の象徴となるわけです。セフィロートの道で最後にゼノギアスで戦うイベント戦のウロボロスが何故行わなければならないイベント戦なのか、わかるかと思います。

ウロボロス - Wikipedia


この辺りはほぼ確定させていいほどに似通った部分というのはわかるかと思います。
次はここから連想して、キーワードをつなげて考えていきます。


一部のヒトが持つ筈の、アイオーン(=波動存在)由来の要素である霊的種子=プネウマとは何かを考えてみます。一番わかりやすい所は前回の部分から引用するとここだと思います。

アカモートの種子を持つ心魂は他のものより優れていた。そのため、他の人間よりもヤルダバオトより愛されていた。
ただしそれは、彼がその原因を知っているからではなく、ただ自分が勝手に、自分がその原因だと思い込んでいただけである。
そのために彼はその種子を持つ心魂たちを預言者、神官、王に任命していた。今まで聖書に描かれた預言者によって言われた多くのことが、実はより高い本性を持つ種子を介して言ったということである。

 

人間にはこのように三要素の人間がいることを示しているが、心魂的なもの、霊的なものは人間自身の行いによってどうにでも傾く
その感覚的な訓育のためにこの世は具えられており、心魂的な人々の行く先は自分達の選択次第であるがゆえ、彼らを救うためにソーテールは降り立った。

(中略)

地上に降り立ったソーテールによってすべての霊的なものが知識によって形作られ、完成する時が成就の時である。(成就の時とはつまり、ヤルダバオトの作った物質の世界にとっては、終末の時を意味する。)

 

どうでしょうか。一部のヒトが他のヒトより明確に優れていて、それゆえにデウスに無意識的に愛されていて、そういったヒトが現界で感覚的な訓育を積む事で、すべての霊的なものが完成した時が成就の時。
これはもう、アニマの器の同調者であり、エーテル能力=秀でたアニムスという事を自然に連想出来ると思います。というか預言者・神官・王って、まさにその通りの人々がギア・バーラーに乗り込んでますよね。預言者は、ソフィアになるのでしょうか。バトリングチャンピオンはいないのかな まぁ、愛されてるといっても愛されすぎてEP5では法院らの乗り移り先にされそうになってたわけですけども。ミァンからしたら、EP4で人口の96%を壊滅させ最終的にはカインや法院がいらなくなるほどに、霊的種子=エーテル能力を持つヒトは、愛すべきパーツとなったわけです。成就の時とは、ゲーティアの小鍵を発動し、マハノンが目覚めた時でしょう。

この点は、実はゼノサーガにもヒントがあります。というのも、ゼノサーガエーテルとは実はナノマシン等を使ったテクノロジー由来が大半であり、純粋なエーテル能力を使っているのはケイオスだけと、EP1の攻略本で明確に言われています。これは逆説的に言えば、当時その純粋なエーテルとは何かを比較する相手とはゼノギアスエーテル能力のことと時系列的に明らかです。ということはつまり、ケイオス君の持つ神の言葉を使った(ゼノサーガの)アニマとか上位領域に由来する力というのは、ゼノギアスのゾハルを経由したエーテル能力と根本原理は同じという事になるのですから、プレロマ由来である霊的種子とエーテルを結びつけて考える説をより補強する事が出来ます。


ここから更に話を加えることが出来ます。ここまで行くと私の妄想に近くなるのですが、おさらいからです。
グノーシス神話においては上のソフィアは抱いた負のパトスを捨てる事で下のソフィア=アカモートを生み出し、その下のソフィアも更に自らから産まれた負のパトスから物質(=サルクス)肉体を作りました。プシュケーは立ち返りの性向からでしたね。そして、そのサルクスとプシュケーからヤルダバオトを作り、ヤルダバオトから産まれた人々を経由して現界での霊的種子の成長を待ち、それによってついにアカモートはプレロマへとようやく帰る事が出来ました。
上述のようにゼノギアスのオリジナルエレハイム、またはエクソン置換されたミァン・ハッワーを下のソフィアと仮に当てはめた場合、エレハイム(EP2エリィ)とミァン(M0000)が別れた理由や、エレハイムが主体でミァンが補体な理由もわかるのではないでしょうか。
つまり、デウスの持つ兵器としての性向は、負のパトスと言い換えることが出来るのではないでしょうか。ということです。負のパトスをミァンとして捨てて、ソフィアの性質のみを受け継いだからエレハイムが主体なのではないでしょうか。この仮定が正しいと、グノーシス神話におけるアカモートが行った人々に眠る霊的種子の成長によるヤルダバオトからの呪縛の脱却とは、ゼノギアスでは実は、オリジナルエレハイムが意図的にアーネンエルベを狙った行動なのではないか…という私の仮説が浮かび上がってきます。
なぜなら、アベルは波動存在と接触した時に、波動存在へ「母親への(胎内)回帰願望」という性向を与えているからです。まさしく、キリストがアカモートに立ち返りの性向を与えたのと同じ事を行っています。だからグノーシス神話的に解釈すると波動存在が回帰願望の性向を持つ事は、そのまま四次元宇宙においても結果に影響を与えているはずです。つまりその役目とは、ミァン・ハッワーにほかならないわけですから、波動存在とはミァン・ハッワーの真上に位置しなくてはなりません。波動存在は、プロパドールなどではなく、まさしく上のソフィア…アイオーンのソフィアを指すということになってきます。
であれば、ソフィアを始めエリィが母の性質を持つ事は、アベルが母親への回帰願望を持つからという簡単な理由だけでなく、そもそもアイオーン・ソフィアが聖母の性質を持つからともいいかえる事ができるのです。だって、ゾハルを見ただけでは普通の人間ならママンは思い浮かべないでしょ。普通…。

加えていうなら、いくらデウスが生体パーツで構成されてるからとはいえ、1万年もかけて人間型のヒトを育てるような面倒な工程を通る必要が果たして本当に効率的かどうかという事も言えます。何なら別にアニムスはクラゲとかゴリラとかでもいいのでは?という事です。それを精神的な訓育が必要で、それはアカモートが霊的種子を成長させ、デウスという負のパトスを脱ぎ捨てたいためとするのであれば、ヒトを生み出す理由となるわけです。

歴代のエレハイムがアカモートであり、上のソフィアの堕落によって産まれた存在であるというのであれば、恐らくエリィが代々つけている十字架のペンダントは、プレロマと中間界を隔てる境界の意味であったホロス(直接的意味はギリシャ語で「全体」)か、スタウロスギリシャ語で「苦しみの杭…転じて十字架を指す」)というのでしょう。彼女を下の世界に縛り付けている肉体の象徴として、カドモニあるいはペルソナがオマケ的にプレゼントしたものだとしたら…なんという皮肉。


更に妄想を深めるとこんな事も説明できます。パーフェクトワークスの10Pにあるアベルの説明、「軍の中でもトップシークレットとなる連結実験に”偶然”立ち会った謎の少年。波動存在との接触により、不思議な力を身につけることとなる。」と、生体電脳カドモニの説明、「劇中では、「アベルの回帰願望を感じ取った波動存在が、母親としての意志を備え、エレハイムを生成した」となっている。…が、真実はもっと深い所にあるようだ。この部分は20年近く私の中で長い長いゼノギアスの大いなる謎の部分だったのですが、これについても説明することが出来ます。

それは、アベル=ソーテールという仮定と、オリジナルエレハイム=下のソフィアという仮定によってです。アベルはプレロマから現界へ降り立ったソーテールであるにも関わらず四次元宇宙の肉体を持つために、その物質世界的な目でゾハルを視界に入れた時に、他の「人間」には見えぬ、ゾハルに閉じ込められた霊的存在=アイオーン・ソフィア=波動存在を観測してしまったから、生体電脳カドモニ内の生体素子ペルソナから肉体を持つ母の要素…オリジナルエレハイムが生成されてしまったのではないか…というのが私の仮説です。つまり…ゼノギアス版流出説です。

そう。
私は接触者である君の観測行為によって
人の特質……母の意志を持ったのだ。

母の意志?

覚えているはずだ。
私の降臨直後の事象変移機関、
『ゾハル』と君は接触している。

 

そうだ。
私の意志はデウスの要であった
生体コンピューターを介して
具現化した。私と結合した生体
コンピューターは、その機能を
進化させ、そのバイオプラントに
よって一つの中枢素子を生成した。
それが彼女なのだ。

つまり、ゾハルとデウスの連結実験時点においてはアベル以外の人間には波動存在の存在は気づきもしていない可能性が高いということです。もしアベルがソーテールであるというのなら、子供が軍のトップシークレットの中枢部分に何故入り込んだのかも、堕落した波動存在(=ソフィア)を救うためとわかりやすい理由で説明できますし、何よりアベルがプレロマ由来の存在であり、観測端末であるというのは、ゼノサーガアベルがウ・ドゥの実数領域における観測端末という事と全く一致します。ゼノサーガアベルが何のためにいつ産まれたか(出現?)といえば、ネピリムがロストエルサレムレメゲトンプログラムの制御実験に失敗し消失化したときですよね。ネピリムの外見を思い出してください。特に服装を。さて、どうでしょうか。流石に偶然ではないと思いませんか?

この「回帰願望」が「立ち返り」という性向と同一であるという仮定を辿ると、波動存在の意図を汲んだオリジナルエレハイムが、デウスが起動しミァン・ハッワーへと変貌して最初の行動が「本星」…ロストエルサレムへ向かう理由である、ということも自然に繋がります。一応説明すると、OPのオペ子のセリフ「NZ128、EZ061…本星です!」の本星とは、地球=ロストエルサレムを指しています。
ゼノギアスのロストエルサレムは不可侵宙域であり、禁忌の地とされ、何らかの秘密が隠されていると言われています。波動存在がそこへ向かいたいというのであれば、ロストエルサレムはプレロマ…高次元領域へ向かう手段なり、穴が空いているという事に他なりません。もしかしたらゾハルの所有も条件かもしれません。もう一度OPを思い出しましょう。

You shall be as gods You shall be as gods You shall be as gods.....
(=汝(ら)神の如くなりん。※)

(※ここだけ抜き取った言葉としてならEP1のシオンのセリフ。)本来は創世記3-5でヘビが知恵の果実を前にイヴを唆す所の言葉の引用。前述の通りHawwaはイヴなので繋げて解釈も出来る。)

果たしてこれは本当にデウスの意図なのでしょうか?こうなると私には波動存在の意図に見えます。


そして、1万年後には波動存在の他に、ナノマシンによる神との合一を経て、ゼノギアスEP5のEDで唯一、神の世界へ辿り着いた人物がいました。それがカレルレンです。元ネタの作品を彷彿とさせますね。逆にグノーシス神話と違い、ソーテールとアカモートはプレロマへ還りませんでした。人は不完全で構わない、それを補い合い助け合うのが人間だというのがフェイの結論でした。1万年の長い長い時間を経て出た結論です。


こんなところが、私の考えるゼノギアスEP1の謎部分の解釈です。


逆に、ゼノギアスEP6の予想もしてみます。それはつまり、これらとゲーム内の本編をつなぎ合わせて浮かび上がってくる疑問点ということになります。

・カレルレンの対(シュジュギア)の存在がいないままプレロマへ登った事による不具合・不都合
・ソーテールとアカモートも残ったままでプレロマへ帰っていないこと
グノーシス神話的には本来ヒトと結婚する事になる天使の立場の不在
・ロストエルサレムが今どうなってるか
・プレロマ由来である霊的種子を持つヒトがプレロマへ登らずに肉体世界へ残ったままであること。You shall be as gods.は拒否したまま。
・仮に結論を変えたとして今やゾハルも波動存在もなしにヒトはプレロマへ登れるのか?
・ゾハルは本当に破壊出来たのか?というか出来るものなのか?地球生命誕生と同タイミングで産まれた存在が?
・プレロマへ登る事が人類(あるいはヒト)の真の幸福や、世界の解決と言えるのかどうか?


この辺りとなります。ゲーム内や、PWでEP6を全く触れない理由は、恐らくゲーム内の話から逸脱してしまうこともあるのですが、…それ以上に恐らく続編でやりたかったネタだったのではないかと思っています。

ゼノギアスは知っての通り続編を作る事は出来なかった作品です。今話した多くの要素はゼノサーガに持ち越したテーマだったのではないのか…というのが私の考えであります。特に最後の行です。このページを見て下さい。

PlayStation2/Xenosaga | バンダイナムコゲームス公式サイト

人の意識を束縛しつつも、人を人らしくしている要因である恐怖。これを超克し、新たな意識体として人が、そして宇宙が進化していく術は果たしてあるのか? といった自己、そして世界に対する疑問を、作品全体を通して解明していきます。

ゼノサーガEP1はリンク先にあるような意味で考えてみても、実に深い意義を持った作品であったと思います。宿題が結局殆ど解決出来なかった事は、残念で仕方ありません。
しかし、私はソーマブリンガーゼノブレイド以降の作品がこれらを意識していないとも思えないと思っています。ですからこそ、判断材料の増えた今、ゼノギアスゼノサーガを考察するという意味においても、後続の作品を考察する価値は十分あると考えています。


最後に、前々回に話したグノーシス主義の持つ3つの要素をゼノギアスに当てはめて考えてみて終わりたいと思います。


1.反宇宙的二元論
ヤルダバオトであるデウスによって「作られた世界」。最初から極めて肉体的な目的を持っており、ヒトはあくまで神(デウス)の部品。兵器運用実験のためにM計画だとか延々と戦争を続けている。ついでに缶詰作る。この世はクソ。

2.人間の内部に「神的火花」「本来的自己」が存在するという確信
→ヒトはゾハルに直接アクセスして能力を使うエーテル能力を備え、デウスの初期の想定を上回る素質を持っていた。一万年の成長過程を経て、いよいよアーネンエルベに成功した。

3.人間に自己の本質を認識させる救済啓示者の存在
→フェイ。あるいは接触者シリーズ。1万年間の全ての要素において、接触者らがいなくては物語はこうはならなかった。

 

 

参考サイト

Xenogears Data Depository - ゼノギアス攻略データ -

様より台詞集を引用させて頂きました。